■『モモとカービィ』 第2話

■新たなる能力


『な、なんだその能力はぁ!?』

第1のボス、ウィスピーウッズが慌てふためいた声で叫んだ。
目の前にいる敵は傘をさしている。
そう、ただの傘、パラソル、それなのに。

落とすリンゴ弾はことごとく弾かれ、たまに美味しく頂かれられる。
そしてこの傘はおよそ傘とは思えないほどの攻撃力をもって自分を追い詰めていく。
『これがコピー能力、パラソルだ!!!』
カービィがパラソルを構えて突進しながら叫んだ。
『そ、そんな話 きいてないぞおぉおぉおおお〜〜!!』

どかぁああ〜ん!!!!

派手な爆発音とともに、ウィスピーウッズは力尽きる。
『あ、あぁ…デデデ大王さま、ごめんなさい・・・。』
飛び散る星のかけらと煙、その中から一際光るものがあった。

7つに分けられたスターロッドの分身の1つだった。

カービィはスターロッドを片手にお得意のダンスを踊る。
3人に分身して踊って見えるのはスターロッドの力だろうか、
7つに力が分けられても、その力は計り知れないようだ。

そのとき、不思議な光が空から舞い降りた。
『ね、ねぇ、ここは夢の力がまだ残っている世界なの!?』

光から少女の声が聞こえてくる。
最初は警戒していたカービィだったが、どうやら敵ではなさそうだった。
見たことのない光の生き物、この星のものではない、それに酷くあわてている。
どう考えてもデデデと関係あるとは思えなかった。

カービィは声に応えようとしたが、いまいち伝わらないようだった。
カービィは元々あまり言葉を発さない、全体の様子や身振り手振りで大体のことはわかるし
この星の住人ならば、カービィの意思は自ずと相手に伝わるはずなのだが・・・

『あ!それそれ、そのステッキちょっと貸して!』

彼女?は必死の様子でスターロッドに食いついた。

『このステッキ…すごい夢の力を秘めてる、私は夢の力がないといずれ消えてしまう。
私はやっぱり生きていたい、 お願い! 力を貸して!!!』
呼応するようにスターロッドが輝きだした。

よくわからないけど、敵ではないと判断したカービィは快くロッドを差し出した。

こうして彼女の光はスターロッドに吸い込まれていく…

そこで、彼女はこの世界で何が起こっているのか理解した。
自分(スターロッド)は何なのか、なぜ7つにわかれているのか、
そして、デデデは悪戯のためにこの事件を起こしたわけではないことも、
デデデは事前に予知していたのだ。
夢の泉を支配下において悪夢の泉にし、この星のすべてを闇に飲み込もうとしている存在
ナイトメア・ウィザードが近づいていることを。
コイツにはおそらく…自分を倒したカービィも歯が立たない、
そう判断したデデデは、夢の泉を封印することでナイトメア・ウィザードの目的そのものをなくしてしまおうと、
苦肉の策で今回の事件を起こしたのだった。

『・・・そんな、この世界でも夢と悪夢が戦っているなんて…』

彼女は以前にもそんなことがあったのか、深くため息をついた。
と、同時に、このロッドの力に気付き、何かを決意したようだった。

『えぇっと・・・、あなたは、カービィね』
カービィは名乗ってもいないのになぜ? と首?をかしげる。

『ロッドを通してわかったのよ、カービィ、プププランドの異変も、大体わかったわ! そして、本当の敵もね』
え、本当の敵? デデデ大王じゃないの? そんな表情のカービィ。
『うん、違うの。それでね、私も戦いたい!一緒に!!! 夢を守りましょう!!!
私は昔に姿を失っちゃって、今のままじゃ力になれないけど、
このロッドの力であなたのコピー能力を媒介にして、私は仮の姿で実体化できるわ!』

ふむふむとうなずくカービィ、

『今のコピー能力、パラソルでしょ?それを持っていた敵を思い浮かべて、
あとはロッドの力を信じて、コピーを開放するように念じてみて!』

そのとおりにすると、カービィの体から光が走りはじめた
やがて光は渦を巻き、星の光になって何かを形作っていく、
それは、元々パラソルを持っていた敵、ワドルディの姿だった。

『やったー!うまく行ったわ!! これで私も手助けできる。
これはヘルパー能力って名づけましょ! 私の名前はモモ、これからよろしくね!!』

うん! と大きくうなずくカービィ、笑顔で握手もしてすっかり仲良し。
『敵と握手してるみたいで、なんか変な感じだね』
と、モモにもカービィの意思が伝わるようになったようだ。
『あ、でもねぇ、本当はもっと可愛い女の子の姿なんだから!これからおいおい話していくわね、
あ・・・なんか今までので凄い力つかったみたい、お腹すいちゃった・・・』
へへへ、僕もお腹すいちゃった、と言わんばかりにお弁当を取り出すカービィ、そっとおむすびをモモに差し出す。

『いいの? ありがとう! 食べながら聞かせてあげるわ、私の事』

こうして、謎の少女・モモの乱入により、カービィの旅も変化を始めていくのだった。
(続く)

注)ヘルパー能力とはそもそもSFC『星のカービィスーパーデラックス』にて、
カービィが敵を吸い込みコピーした能力を、自分の味方:ヘルパーとして外へ出す能力、
コピーした(吸い込んだ)敵と同じ姿をした味方で、二人同時プレイなら2P側がそのヘルパーを操作できる。
モデルになった夢の泉の物語のゲームではまだそのシステムは無い。




inserted by FC2 system